あの有名な「ごっくん馬路村」ドリンクの発信地である高知県馬路村。
その元気な村にある馬路小学校の実践「もう一つのゆず製品を考えよう」の取材に行って来た。
ここにも「ほんまもん」の実践を見つけた。
馬路村。まさにその名の通り「馬しか通れない路」だ。くねくねと曲がる道をどんどん進んでいく。ガードレールはないのだが、きれいな川を横に見ながら進む。
馬路村にある安田川。数年前ここの鮎が高知県の川でとれる鮎の味コンテストで四万十川を押さえて1位になったくらいだ。しかし、地元の方の話では、これでも昔に比べると水量や水質は落ちたのだという。
ここは、馬路の子どもたちにとっても活動の場。この自然ゆたかの中で子どもたちは元気にたくましく生きている。
馬路小学校へつくと、上記の実践をされた前田先生が対応してくださった。校長先生とお話をし、用務員さん特性の柚子ジュースをごちそうになり、お願いしていたゆずの加工場の見学に出かける。途中、この村の案内所「まかいちょってい家」により情報収集をする。
加工場では、販売課長さんが対応してくださった。
平成5年に完成した加工場。これにより安定した出荷ができるようになった。またちょうどその時期に配送業の発達も重なって通販が確立した。
加工場ではみなさん手際よく作業されていた。外では多くの箱詰めされた商品が配送業者さんに積み込まれていた。もうすぐお中元の時期。今でも忙しいのだが、この時期は毎日夜遅くまでみなさん働くそうだ。顧客数は30万近くだとか。県内の多くの地域も同様の商品をつくっており、争ってお互いつぶし合いするのではなく、県外で市場をつくった。当初は大変だった。ある時、地方の物産展でのお客さんから現金書留が届き、この方法だと気づき、今のような大きな事業となった。しかし、妥協をゆるさない本物の商品しかださない。このことは実践の中ででてくる井上さんの話で詳しく伝えることとする。
ダイレクトでお客様と接していて、そのことで価格も自ら決定でき、さらに直接お客様の意見を聞くことができるので、その分アイディアがわいてくる。新製品はだいたい半年に1つくらいの割合でだしているという。
馬路小学校。中学校と隣接している。
児童数は、52名。5・6年生が複式である。今年度は基礎学力向上の学校フロンティア事業があたっていて、主に算数についての研究が進められている。
総合に関しては、地域密着型で、3・4年生では馬路村特産である「ゆず」、5年生では馬路村の産業であった「森林」、そして6年生では馬路村の問題である「高齢化」だ。まさにこの村の特徴を総合で表した形になっている。また、逆に言えばこれが地域のニーズでもある。
前田先生は、上記3つの総合をされており、今回とりあげる「ゆず」の他の2つも興味深い実践をされている。
「もう一つのゆず製品を考えよう」4年生の実践である。新しいものを求めているのではない。1つでもいいから村のためになるものを新しいものばかりを求めるのではなく、古いもの、今あるものを見直してほしいという願いでこのタイトルになった。
馬路村が誇る「ごっくん馬路村」。しかし、前田先生は他地域にある同じようなドリンクにも目を向けさせ、考える機会をつくった。それが、ゆずドリンクの飲み比べ大会だった。結果は僅差で「ごっくん馬路村」が勝ち。しかし、前田先生はこれでは子どもたちに考える機会がなくなると思い、僅差だった製品と「ごっくん馬路村」を比べることをした。ここから他地域の数あるゆず製品へと目がいき、調べ学習が始まった。県内のすべてのゆず製品を調べた子は、あちこちに自ら電話をかけ、インタビューしたり資料を送ってもらりした。この子は、県内のゆず製品マップを完成させている。
その後、ゆず自体のことについて調べたり、それらをポスターセッションにして発表したりした。馬路小はこの以前に文部省から社会科の指定があたっており、このようなポスターにまとめることを多く体験していたため、ポスターセッションの方法自体に時間はかからず、中身が充実したものとなった。
そして、いよいよ自らが考えたゆず製品のコンテストとなる。ここでも子どもたちは多くのアイディアをだし、大人では考えつかないような製品を考え出した。コーヒーにゆず、お茶にゆず、ととにかく自分で飲んで確かめ、その結果おなかがたぷんたぷんになったという子もあった。また、ゆずの軍艦巻きをつくり、しょう油を少しつけることで、思いも寄らぬおいしい味となったものもあった。クッキー、さらにはゆずのり、そして目覚まし時計と子どもたちのアイディアは爆発した。
コンテストでは、参観してくれた大人すべてが審査員だ。その中でもプロの目として審査してくださったのが当時販売課長だった井上さんだった。この実践がほんまもんになったポイントはここにある。
よくある実践では、製品作りをし、コンテストをして「おいしいね。」「良いアイディアだね。」とみんな評価して終わりになりがちである。しかし、この実践ではプロの目から井上さんがそれぞれの製品に対して商品化するには何が必要で、子どもたちの作品にはどんな考えが足らないか厳しく指摘してくれた。井上さんはこう言った。
味は完璧であるが、商品化するということはおいしいだけではいけない。馬路村が誇っているゆず製品のきまりがある。それは「安心、安全、おいしい」である。私の子どもたちに安心して飲んでもらえる、安全でおいしいものだけをつくっている。みんなは食べる物を考えてくれ、それらはとてもおいしい。でもそれらが店に並んだときに、いつも安心してお客さんが食べることができ、いつも安全にできるか。そこまで考えないと商品化できない。
子どもたちは、このお話を聞き、学んだのである。それは、この馬路村が誇るゆず製品は、馬路村の大人たちが苦労し、研究を重ねて作り出した物だと。まさに村に参画する基礎ができたのである。今までは、簡単に飲んでいた「ごっくん馬路村」もこのような苦労があってできていたのか気づいたのである。
井上さんはインタビューの中でこう言う。
この授業は村にとってとても大切な物。我々はこういうことを次の世代へ受け継いでいかなければならない。そして、この馬路小の子どもたちはこのようなことを学んだことで、馬路村をさせていく基礎となり、この子たちが将来馬路村をつくっていくのだ、と。
ちょうど実践した子どもたちが来てくれた。今中学1年生だ。期末試験間近というのに、インタビューに応じてくれた。例の県内のすべてのゆず製品を調べた子に、おなかがたぷんたぷんなるまでがんばって実験した子、そして馬路村のキャラクターグッズ「ごっくんぼうや」に対抗して女の子バージョン「ゆずみちゃん」をつくった子だ。
校長室で、その当時のポスターや作品をひろげていると、「あっ、これ!!」と懐かしそうにワイワイやっている。この3年前にやった実践を鮮明に覚えているのである。
私が「たのしかった?」と聞くと、全員大きく「うん!!」と答えた。自分がどんなことをやったのかだけを覚えているのではない。友だちがどんなことをやったのかも覚えている。もちろん前田先生も覚えている。井上さんも覚えている。これからもこの実践がほんまもんであることがわかる。子どもたちは、苦労し獲得した物が大きかったのである。
この実践は、まさに地域に根ざした実践である。元気な馬路村、そして地域の方々、そこで育っている元気な子どもたち。しかし、そんな環境下にあっても井上さんのような方を見つけ、授業の中に入ってもらえるようにする力が必要である。前田先生はみなさんに助けてもらったという。しかし、それを引き出したのは前田先生であったのだ。
ここでは、これまでにして詳しくは村川先生が出される本「プロジェクトS」を見てほしい。
TOP