北海道渡島半島、内浦湾に面する八雲町。
長年、八雲町を東西に流れるユーラップ川の自然遡上のサケを取り続けている動物写真家、稗田氏に会いに行く。
稗田氏は、サケだけではなく、川に生息する生き物たちすべてに対して長年研究をされている。
この稗田氏がおいかけるサケ、そして自然の状態が保たれているユーラップ川を環境教育教材として活用できないか、また稗田氏がもつデジタルコンテンツを活用する手だてについて大日本図書の原氏についていき、取材に行く。
この日、稗田氏に案内してもらい、ユーロップ川を河口からサケが遡上する上限の上流部まで説明しながら案内してもらう。
以下は、稗田氏の言葉・表現を活用し、まとめたものである。
ユーラップ川河口。
真ん中に小さく見える白い鳥は、白鳥。
市街にありながら、川のまわりに木があるのがめずらしい。河口付近は、その昔湿地帯だったそうだ。
ユーラップ川は「遊楽部川」と書く。
稗田さんたち町内外約250人でつくる「遊楽部ファンクラブ」があり、そこでは自然観察会などを行い、地元の子どもたちへの自然体験活動の充実を図っている。
河口より少し上流にのぼったところ。
このあたりでも遡上してきたサケが産卵する。
サケは、湧き水がわいてくるところに産卵する。自分が生まれた湧き水に産卵する。
この湧き水、実は水温が低く、品種改良などされていなかった昔の稲作には適していない。その結果、水田に取り込む堰が作られなかったのもこのユーロップ川が自然の状態で保てた要因である。
鬼の洗濯板のような岩が河床に広がっている。
1つの川なのに、いろいろな様子が見られる。この浅くごつごつしたところもサケはのぼっていく。

川の周りには色とりどりに色づいた木々。
この木たちが川の水へ栄養分を送り込む。川の水の色は、少し黒みがかっており、これこそが木々の養分を含んでいる証拠となる。
しかし、逆に木々へサケが栄養を送っているという調査結果も出ている。海の窒素成分が木の葉から出てきたそうだ。これによりサケの遡上の役割は、サケを捕食するヒグマやワシなどの動物のみならず、そのまわりにある木々などの環境も保全していることとなる。
あまりにおいしそうなので、ついくせで飲んでみた。しかし、北海道の生水(キタキツネの糞などの菌があるため)はやめておいたほうがいいと稗田さんに教えてもらう。これは逆に本当に自然豊かということを示している。
ユーラップ川は、暴れ川である。よって、サケをとる梁もあえてしっかりしたものを作らずに、吹き沈みできる浮輪を活用した物となっている。水量が増えたときや落ち葉がたまったりするとサケが通る道ができ、それを乗り越えていくことができる。
産卵を終えたサケ。
色が白っぽくなる。サケのオスメスの見極め方は、2匹並んで上流にいるのがメス。その後ろがオスとなる。
メスは、川底に鼻先をつけ、犬のようににおいをかいでいるような仕草をする。自分が生まれた湧き水を探しているのである。
湧き水を見つけると、そこでメスは体を横にして尾びれで川底をたたく。すると小石が舞い上がり、舞い上がった小石は川の流れで押し流されていく。これを利用して川底の小石をどけ、直径1メートルほどのすり鉢状のくぼみをつくる。
しかし、たたいていると大きめの石が現れる。おかまいなくたたきつづけると、石の間から砂れきが流れに押し流されてすき間があく。これを繰り返して十分なすき間を作ると、メスはくぼみに体を沈め、後ろにいたオスがメスに寄り添うように産卵、放精が始まる。
5〜8秒くらいの間に千個以上の卵を産み落とすと、精子が白い雲のように広がる。
産卵を終えたメスは、すぐにくぼみの上流側を尾びれであおり、卵に小石をかけていく。
卵はこれにより外敵から守られ、新鮮な湧き水に満たされる。
しかし、このオス・メスは自分たちの子どもを見ずに力尽きるのである。そのために上記のような手だてをするのである。
川の近くで見られた地層
採石場だったが、この地層があらわれたため保存している。
真ん中に見える丸いものは、ノジュール。
これも立派な教材となる。
先日このポイントでヒグマの足跡を見つけたそうだ。残念ながらこの日は見つからなかった。
しかし、ヒグマがいるとすぐにわかる。それは、においだ。動物園のような強烈な動物のにおいがするそうだ。
長年、この川を見て、どこに何があり、何がでてくるかが稗田さんにはわかっている。
マタタビの実。
実はこれは食べることができる。青い実と熟したかき色の実がある。どちらとも食べてみる。すると、青い実はとにかく辛い。しかし熟すととてもあまくおいしい物だった。
マタタビとブナの実。
どちらとも食べることができる。ブナの実は、マツの実みたいな味がした。
いずれにせよ、こうした食の体験も子どもたちにはおもしろく、かつ重要な体験だと感じる。
全体を通して、地域を生かした総合的な学習の展開をはかるにおいて、このような体験活動はたいへん有効であると考える。
地元の子どもたちにとって、このような体験活動をすることは自分たちの地域のよさを認識し、自ら地域に関わっていくことを促進する。
また、「川」をテーマとした総合的な学習の展開においては、この活動を発信源とし、川のネットワークを広げ、他地域との交流により広い視野、そしてさらにまた自分たちの地域のよさを再認識できる学習展開が可能になってくると考えられる。
いずれにせよ、今の子どもたちにとってこのような自然にどっぷりつかり体験することは必要であろう。
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